
ドローン技術を活用したビジネスやサービスが、現在拡大中です。一方、無人航空機を安全に、高い信頼性のもと運用するためには国が認定する資格が不可欠です。そこで気になるのが、資格取得にはどのくらいの費用がかかるのかという点でしょう。この記事では、ドローンの国家資格を取得するために必要な費用について詳しく解説します。
ドローン操縦にはどんな資格が必要なのか?
ドローンの操縦には、用途や飛行環境によってさまざまな資格が必要です。その中で、とくに重要なのが国家資格です。現在、ドローンは空撮や農業での肥料散布など、多岐にわたる分野で商業利用が進んでいます。
それに伴い、安全な飛行を確保するための法整備が進められています。その一環として、ドローンの操縦に必要な国家資格「無人航空機操縦者技能証明制度」が導入されました。
資格を取得することで、操縦者が安全にドローンを飛行させるための知識と技術をもつことを証明できます。特定の飛行条件、空港周辺や人口集中地区などの規制された空域での飛行や、夜間や目視外での飛行などの特定飛行には、事前に飛行許可を取得しなければなりません。
国家資格保有者は、この申請を簡略化できるメリットがあります。一方で、特定飛行に該当しない場合や、飛行条件によってはドローンの資格なしで飛行できる場合もあります。
しかし、事業の幅が狭まり、同業他社との差別化がしづらくなるのがデメリットです。また、円滑なビジネスの足枷となる可能性もあります。国家資格の取得は、効率的なドローンビジネスを進めるための欠かせない手段となるでしょう。
国家資格取得に必要な費用の相場
ドローンの国家資格を取得する際の費用は、大きく分けて講習費用、試験費用、交付費用の3つに分類されます。
講習費用
ドローンの国家資格を取得するには、国土交通省に認められた講習機関での受講が必要です。講習費用は、受講者がドローンの経験者か未経験者かによって大きく異なります。未経験者の場合、講習の日数や内容が多いため、費用が高くなる傾向があります。
たとえば、二等無人航空機操縦士の資格を未経験者が取得する場合、講習費用は約40万円前後かかることが一般的です。経験者は15万円前後の費用で済むことが多く、短期間で講習を終えられます。一方、一等資格の場合は、未経験者で80万円前後、経験者で50万円前後が目安です。
試験費用
ドローンの国家資格取得には学科試験、実地試験、そして身体検査が含まれます。これらの試験にはそれぞれ費用がかかり、二等無人航空機操縦士の学科試験の費用は8,800円(税込)、実地試験は2万400円(税込)です。
身体検査については、書類提出による場合は5,200円(税込)ですが、会場での検査を受ける場合は1万9,900円(税込)です。一方、一等無人航空機操縦士の試験費用は、身体検査は二等無人航空機操縦士と同額ですが、学科試験は9,900円(税込)、実地試験は2万2,200円(税込)と、高くなる傾向があります。
交付費用
試験に合格すると、資格の証明書として無人航空機操縦者技能証明書が交付されます。この交付費用は3,000円で、資格の更新や再交付の際には2,850円が必要です。一等資格を選択した場合には、さらに登録免許税として3,000円が発生します。
ドローンの民間資格の費用相場
ドローンの国家資格は2022年12月5日より開始されましたが、それ以前から民間スクールが独自に定めた資格が存在しています。
ドローンの民間資格は、各種団体や企業が提供する認定資格で、操縦技術や安全知識を証明するものです。国家資格とは異なり、特定の飛行や業務に特化した内容が多く、取得することで業務の幅が広がります。ただし2025年12月以降は、民間技能認証のみを取得している場合、申請書類の省略が認められない運用へと変わることも踏まえておきましょう。
ここからは、民間資格の取得における費用相場について、詳しくご紹介します。
JUIDA認定資格
一般社団法人日本UAS産業振興協議会が提供するJUIDA認定資格では、無人航空機操縦技能証明証や、無人航空機安全運行管理者などが交付されます。商業利用を想定した、基本的な技術や安全管理の知識を身に付けることができるでしょう。
スクールでこのJUIDA認定資格を取得する際の費用相場は、およそ25万円ほどとなります。
DJI CAMP認定資格
ドローンメーカーであるDJIが主催するDJI CAMP認定資格は、DJI製ドローンの操縦者向けとなっている資格で、DJI製品を業務で活用したい方に適しています。10時間以上のドローン飛行経験がある操縦者を認定する民間資格となっており、取得することでドローンの正しい知識や操縦方法、飛行モラルが身に付いていることを証明できるでしょう。
スクールの費用相場は、およそ10万円ほどとなります。
IAU認定資格
IAU認定資格は、IAU(International Association of Unmanned Systems)が提供する国際基準に基づいた資格です。交付される民間資格は、無人航空機操縦技能認証や無人航空機安全運航管理責任者認証といったもの。
スクールでこの資格を取得する際の費用相場は、およそ22万円ほどになっています。
DPA認定資格
一般社団法人ドローン操縦士協会が提供するDPA認定資格は、農業や測量など特定の分野に特化した内容が特徴です。安全な操縦に必要な基礎知識も身に付くため、初心者の方にもピッタリな資格といえるでしょう。
なおスクールの費用相場は、およそ30万円ほどとなっています。
ドローンの民間資格は、それぞれ異なる特徴を持ち、業務内容や目的に応じて選ぶことが大切です。資格取得の費用は10万円〜40万円程度と幅がありますが、学べる内容や今後の活用方法を考慮して、適切な資格を選ぶことを重視してください。
取得するドローンの資格を選ぶ際の注意点
ドローンの資格取得を検討する際は、活用したいビジネスシーンによってどの資格が適切か、慎重に判断する必要があります。
一等と二等の選択
ドローン資格には、一等無人航空機操縦士と二等無人航空機操縦士の2種類が存在します。一等資格は、第三者の立ち入りを防ぐ立入管理措置を省略した特定飛行が可能です。
一方で二等資格は、立入管理措置を実施しなければ特定飛行ができません。一等資格は、立入管理措置が不要になるため、管理が難しいエリアでもドローンを飛ばせるのが利点です。事業の必要性に応じて一等と二等を選択する必要があります。
飛行レベルの選択
ドローンの飛行には4つのレベルがあります。一等資格は、最高レベルであるレベル4まで飛行可能です。一方二等資格は、レベル4飛行が許されていません。レベル4は、有人地帯で目視外での自律飛行ができます。
よって、都市部や商業地域でのドローンビジネスを展開する場合には、一等資格が不可欠です。将来的に、ドローン宅配やインフラの点検、災害時の捜索救助活動を実現したい場合は選択しましょう。
限定変更
ドローンは、通常は最大離陸重量25kg未満しか飛ばせません。しかし、限定変更することで25kg以上の機体も飛行可能です。
さらに、通常は昼間のみ許可されている飛行が夜間飛行を可能にする限定変更、目視内飛行のみだったものが、目視外飛行できるようになる限定変更もあります。ビジネスで必要な場合は、これらの限定変更を検討する必要があります。
手続きの簡略化
ドローンの資格を選ぶ際には、飛行申請手続きを簡略化できるかどうかも重要なポイントです。特定空域や飛行方法での飛行には国土交通省からの許可が必要ですが、国家資格をもっている場合、一部の手続きを免除・簡素化できます。
たとえば、民間資格ではレベル1でもすべて許可が必要ですが、国家資格を保有していると申請手続きを大幅に軽減できます。これにより、必要な書類作成や申請にかかる時間の削減が可能です。
まとめ
ドローン国家資格の取得には、講習費用、試験費用、交付費用など、さまざまな費用がかかります。たとえば、未経験者が二等無人航空機操縦士を取得する場合、スクールの講習費用は約40万円、試験や交付にかかる費用は合計で3万円程度です。一等無人航空機操縦士を取得する場合は、さらに費用がかさみます。しかし、一等無人航空機操縦士を取得することで飛行申請手続きが簡略化されるだけでなく、ビジネスの幅も広がるため長期的な投資としてはメリットがあります。目的や活用範囲に応じて、適切な資格を選ぶことが重要です。